遺言書でできることは?法律上の効力が認められる遺言事項について解説
遺言書は、決められた方式に従っていれば、内容自体は自由に書くことができます。
しかし、遺言書に書くことで法的効力が認められる事項は、法律によって限定されています。
この記事では、法律上の視点から遺言書でできること・できないことについて具体的な解説をしていきます。
遺言書でできることは?
遺言書に書くことで、例えば次のようなことができます。
・遺産を相続人以外に分ける
・遺産を渡したくない人を相続人から除く
・婚姻外にできた子どもを認知する
・遺言の内容を実現するための遺言執行者を決める
・etc…
これらは、遺言者(遺言書を作成する人)の死後に法律上の効力が認められ、例えば遺産の分け方に関する指定は、民法上の相続人や相続分の定めに優先します。
これらの事項を含め、遺言書に書くことで法的効力が認められる事項(「遺言事項」といいます。)は、すべて民法その他の法律に定められており、それ以外のことを遺言書に書いたとしても法律上の効果はありません。
遺言事項はおおむね、①相続に関する事項、②相続以外の財産処分に関する事項、③親族に関する事項、④その他に分類することができます。
以下、具体的な遺言事項について詳しく説明をしていきます。
①相続に関する遺言事項
相続分の指定(または指定の委託)
民法には各相続人の遺産配分の目安が定められており、これを法定相続分といいます。
遺言者の死後、相続人の話し合い(遺産分割協議)によって、法定相続分とは異なる割合で遺産を相続することも可能ですが、その場合には相続人全員の合意が必要です。
その点、遺言によって指定した相続分は法定相続分に優先しますので、例えば「相続分を長男A10分の7、二男B10分の3と指定する。」といった遺言書を作成しておけば、遺言者の意思に沿った割合で遺産を相続させることができます。
なお、相続分の指定を第三者に委託することも可能です。
遺産分割方法の指定(または指定の委託)
預貯金・不動産・株式などの個別の財産について、誰がどの財産を取得するかという遺産分割の方法を、あらかじめ遺言で指定しておくこともできます。
相続分の指定と同様に、遺産分割方法の指定も第三者に委託することが可能です。
推定相続人の廃除・廃除の取消
遺言者に対して、虐待、侮辱、その他の著しい非行をした推定相続人(現状のまま相続が開始したら相続人になる人)から相続人の資格を奪うこと(廃除)ができます。
また、遺言者が生前にした廃除を遺言によって取り消すこともできます。
特別受益の持戻しの免除
遺言者から一部の相続人のみに対して生前贈与など(=特別受益)があった場合に、相続人間の不公平を解消するために、法定相続分に一定の修正を加えて相続分を計算し直す(特別受益を受けた相続人の相続分を減らす)ことを特別受益の持戻しといいます。
遺言者が不公平を承知のうえで生前贈与をしている場合など、特別受益の持戻しを希望しないときは、遺言によって特別受益の持戻しを免除することができます。
遺産分割の禁止
遺産はいつでも分割できるのが原則ですが、遺言によって、相続開始から5年以内の期間を定めて遺産分割を禁止することができます。
遺産分割における担保責任の指定
遺産分割によって取得した相続財産に欠陥があった場合には、価値の減額分を相続人間で補い合う義務(担保責任)があります。
各相続人は原則として相続分に応じた担保責任を負いますが、遺言によってその負担割合を変更し、または責任を一切負わないとすることができます。
遺留分減殺(侵害額請求)方法の指定
遺留分侵害額の支払請求権は、「遺贈→後に行われた贈与→前に行われた贈与」の順序で行使することになっており、遺言によってもこの順序を変更することはできません。
しかし、遺贈が複数ある場合や、同時に複数の贈与がされた場合などで、請求権行使の対象となる財産や相手方が複数になるときは、行使の順序や割合を遺言で指定することができます。
②相続以外の財産処分に関する遺言事項
遺贈
相続人でない人にも遺産を譲渡することができます。
特定の財産を指定して渡すだけでなく、財産の全部または割合で示した一部を譲渡することもできます(=包括遺贈)。
信託の設定
信託とは、財産を信頼できる人に委託(移転)して、一定の目的に従って管理や処分をしてもらう制度のことです。
遺言による信託をうまく利用することで、遺言者の意思に沿った遺産の活用や引き継ぎを実現することができます。
財団法人設立のための寄付行為
遺言によって、遺産を運用して活動する非営利の法人(一般財産法人)を設立することができます。
生命保険金の受取人の変更
遺言によって、生命保険金の受取人を変更することができます。
③親族に関する遺言事項
認知
遺言によって、非嫡出子(婚姻外にできた子ども)を自分の子と認め、法律上の親子関係を創設すること(認知)をすることができます。
未成年後見人・未成年後見監督人の指定
未成年の子の親権者は、自分が死んで親権を行う者がいなくなる場合に備えて、遺言によって、信頼できる人を未成年者の後見人や後見監督人に指定しておくことができます。
④その他の遺言事項
遺言執行者の指定(または指定の委託)
遺言の内容を確実に実現するために、相続手続きを遂行する遺言執行者を指定し、またはその指定を第三者に委託することができます。
祭祀の主宰者の指定
お墓などの祭祀財産を受け継ぎ、先祖の供養を執り行っていく祭祀の主宰者を指定することができます。
遺言事項でないことを書いてもよい(付言事項)
先に述べたように、遺言事項以外のことを遺言書に書いたとしても法律上の効果はありません。
例えば、「兄弟は皆仲良く暮らしてほしい」とか「私の葬儀はこのように執り行ってほしい」などと遺言書に記載したとしても、これらは遺言事項ではないので、法的な拘束力は持ちません。
しかし、遺言事項以外の記載があったとしても遺言書自体が無効となるわけではありませんので、遺言者の希望や遺言書に込めた想い、家族への感謝の言葉などを「付言事項」として記載しておくことは可能であり、一般的にもよく行われています。
まとめ
以上、遺言書に書くことで法律上の効力が認められる遺言事項について解説しました。
遺言書を作成するためには、遺言事項のような法律上のルールはもちろんのこと、他にも、自分の財産や身の回りの人間関係のこと、さらに自分が亡くなるまでに起こりうる様々な変化など、非常に多くのことを把握・検討しておく必要があります。
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